経済学の10原則の具体例

 

原則1:人々はトレードオフに直面する

例(時間の使い方:勉強 vs アルバイト)

あなたは今日の夜 3時間を自由に使えます。

資格の勉強:3時間(合格確率が少し上がる)

アルバイト:時給 1,200円で 3時間働くと 3,600円もらえる

どちらも同時にはできないので、「勉強で得る将来のメリット」 と 「今すぐ3,600円」 のトレードオフになります。

 

 

 

 

原則2:コスト(費用)とは、得るために諦めたもので測られる(機会費用)

例(買い物:ゲーム機を買う)

あなたは 30,000円持っています。選択肢は2つ。

欲しいゲーム機:30,000円

友達と旅行:あなたの負担分 30,000円

ここでゲーム機を買うと、失うのは「30,000円そのもの」だけではなく、
旅行に行けなくなることです。

つまりゲーム機のコストは「30,000円」ではなく「旅行を諦めたこと」(=機会費用)で測られます。

 

 

 

原則3:合理的な人々は「限界的に」考える(追加の1単位で考える)

例(カフェのポイントカード:もう1杯追加するか)

カフェでコーヒーが 1杯500円。ポイントカードはこういう仕組み:

10杯で1杯無料(=500円相当)

今あなたは すでに9杯分スタンプがたまっています。
今日もう1杯買うか迷っている。

追加で払うお金:500円

追加で得るもの:スタンプが10個になり、次回1杯無料(500円得)

このとき合理的な判断は「合計でいくら使ったか」より、
“今もう1杯買うことの限界的(追加の)メリット”を見ること。

今日の追加購入で、次回500円得が発生するなら(好みや満足度も含めて)「買う」が合理的になりやすい。

 

 

 

原則4:人々はインセンティブに反応する

例(職場:締切を守る仕組み)

会社でレポート提出のルールを変えます。

変更前:

遅れてもペナルティなし→ 10人中 4人が遅れる

変更後(インセンティブ導入):

締切内提出:ボーナス1,000円

遅れた場合:罰金1,000円

すると、同じ10人でも

遅れる人が 4人 → 1人に減った

理由:
人は「頑張れ」という言葉より、得する/損する(インセンティブ)があると行動を変えやすいから。

 

 

 

原則5:交易(貿易)によって全員の経済的状況を改善できる

例(友人同士の「リンゴ」と「魚」の交換:得意分野に特化→交換)

AさんとBさんは、1時間で作れる量が違います。

Aさん:リンゴ 4個 か 魚 1匹

Bさん:リンゴ 2個 か 魚 2匹

2時間ずつ働くとして…

 

 

(1) 交易なし(なんとなく半々に作る)

A:1時間リンゴ + 1時間魚 → リンゴ4個 + 魚1匹

B:1時間リンゴ + 1時間魚 → リンゴ2個 + 魚2匹

合計:リンゴ6個 + 魚3匹

 

(2) 特化してから交易(得意な方だけ作る)

Aはリンゴだけ2時間 → リンゴ8個

Bは魚だけ2時間 → 魚4匹

合計:リンゴ8個 + 魚4匹(合計量が増える)

ここで、交換レートを 魚1匹=リンゴ2個 とすると(お互い納得できる範囲のレート)、

Aがリンゴ 4個 渡して魚 2匹 もらう
→ Aの手元:リンゴ4個 + 魚2匹

Bは魚 2匹 渡してリンゴ 4個 もらう
→ Bの手元:リンゴ4個 + 魚2匹

比較すると、

A:交易なし (リンゴ4 + 魚1) → 交易あり (リンゴ4 + 魚2) に改善

B:交易なし (リンゴ2 + 魚2) → 交易あり (リンゴ4 + 魚2) に改善

交換そのものが“パイを増やせる”(その上で分け方も改善できる)という例です。

 

 

 

 

 

原則6:通常、市場は経済活動をまとめあげる良い方法である

例(フードフェスで「おにぎり」を売る:価格が調整役になる)

ある会場で、おにぎりの「需要」と「供給」がこうだとします(1日あたり)。

 

需要(買いたい量)

1個 500円なら 100個買いたい

1個 700円なら 60個

1個 900円なら 30個

 

供給(売りたい量)

1個 500円なら 20個しか作らない(儲からない)

1個 700円なら 60個

1個 900円なら 100個作る(儲かる)

 

このとき 700円だと
需要 60個=供給 60個 でピッタリ一致(=品切れも余りも起きにくい)。

ポイントは、誰かが「あなたは60個作りなさい」と命令しなくても、

高すぎると買う人が減る(需要↓)

安すぎると作る人が減る(供給↓)
という形で、価格がシグナルになって、自然に調整されることです。

(逆に、もし価格を無理に500円に固定すると、需要100個に対し供給20個で 80個不足=行列・転売・抽選…が起きやすくなります。)

 

 

 

 

原則7:政府は市場のもたらす結果を改善できる場合がある

例(工場の排煙:市場取引に“反映されない損害”があるとき)

ある工場が製品を1個作ると:

工場のコスト(材料・人件費など)= 200円

消費者が得る価値(払ってもよい金額)= 300円

ただし排煙で周辺住民に健康被害= 1個あたり150円の損害(工場は払っていない)

 

 

市場だけだと:

工場は「コスト200円で売値300円なら儲かる」ので生産しやすい
(300 > 200)

社会全体で見ると:

社会的コスト=工場200円 + 被害150円= 350円

 

 

社会的利益=300円
→ 350 > 300 なので、本当は作りすぎ(社会的には損)

そこで政府が、例えば

排煙税:1個あたり150円(=被害分を負担させる)
を導入すると、

工場が感じるコスト=200 + 150= 350円

価値300円より高いので、生産を減らす/やめる方向へ

 

結果として、「市場では見落とされていた被害」が意思決定に反映され、市場の結果がより望ましいものに近づきます。

 

 

 

 

原則9:政府が通貨量を増やすと、物価は上昇する

例(小さな町の経済:モノの量が増えないのに、お金だけ増える)

ある町で、1か月に買えるパンの量が 合計1,000個で固定だとします(生産能力はすぐ増えない)。

 

状況A(最初)

町全体のお金:100万円

パン:1,000個

平均的に 1個あたり 1,000円くらいで落ち着く(100万円 ÷ 1,000個)

 

状況B(政府が通貨を増やす)

町全体のお金を 200万円に増やした(2倍)

でもパンは相変わらず 1,000個

すると、パンを奪い合う形になり、平均価格はざっくり

2,000円くらい(200万円 ÷ 1,000個)
に上がりやすい。

 

つまり、(生産量が増えない前提では)お金が増える → 同じモノにより多くのお金が向かう → 物価が上がるという直感です。

※現実は「生産量が増える」「人々がお金を使う速さが変わる」などでズレますが、基本の方向性はこのイメージです。

 

 

 

 

 

原則10:社会は、インフレーションと失業の短期的なトレードオフに直面する

例(景気対策で「失業は減るが、物価上昇が強まる」)

ある国の現状:

失業率:6%

インフレ率:1%

政府が景気対策(公共投資・減税など)をして、需要を増やしたとします。

 

短期(1年くらい)

企業の売上が増える → 人を雇う
→ 失業率:6% → 4%(改善)

ただし需要が強くなりすぎて、品薄・賃上げ圧力が出る
→ インフレ率:1% → 4%(悪化)

 

逆に、インフレを抑えるために金融引き締めをすると、

短期(1年くらい)

需要が弱まる → 企業が採用を絞る
→ 失業率:4% → 6%(悪化)

物価上昇は落ち着く
→ インフレ率:4% → 2%(改善)

 

このように短期には、

失業を下げようとするとインフレが上がりやすい

インフレを下げようとすると失業が上がりやすい

というトレードオフが起きがちです。

※ただし「長期」では人々の期待が変わってこの関係が崩れたり(インフレ期待の定着など)、政策の効果が変わる点も重要です。