上級、大学院向け計量経済学のおすすめ本
計量経済学のおすすめ本(教科書・参考書) – 入門・初級・上級(大学学部/大学院修士)を確認する。
まず、大学院レベルだと何が「上級」なのか
学部の計量経済学では、
\[
Y_i = \beta_0 + \beta_1 X_i + u_i
\]
のような線形回帰モデルから始めて、
OLS(最小二乗法)、t検定、F検定、不均一分散、
操作変数法(IV)、パネルデータ分析……といった内容を
学んでいくことが一般的です。
一方、大学院レベルになると、むしろ
\[
\hat{\theta}
=
\arg\min_{\theta} Q_n(\theta)
\]
のように、
「推定量を一般的な形でどのように定義し、
その統計的性質をどのように示すか」
ということが中心になります。
つまり、次のような問いを数学的・統計的に考えていく授業になります。
- どのような仮定のもとで、その推定量は
一致性を持つのか? - その推定量の漸近分布はどのようになるのか?
- そもそも、そのパラメータは識別されているのか?
- 妥当な統計的推論を行うためには、
どのような方法を用いるべきか?
大学院レベルの授業概要
大学院の計量経済学になると、授業概要はたとえば次のような内容になります。
授業概要
この授業の目的は、実証経済研究で用いられる現代的な計量経済学の手法について、厳密な理解を身につけることです。
授業では、推定および統計的推論の理論的基礎と、それらを実際のデータ分析に応用する方法の双方を重視します。
学生は、経済モデルにおける
識別と推定、大標本理論、操作変数法、最尤法、
一般化モーメント法(GMM)
について学び、さらに
パネルデータ分析や因果推論
の中から、いくつかの発展的なテーマを扱います。
授業全体を通して、理論的な結果を実際の実証分析や、現代の経済学研究と結びつけながら学んでいきます。
計量経済学の上級の書籍おすすめ一覧
1. 計量経済学(New Liberal Arts Selection)
2. 計量経済学(浅野、中村)
4. 計量経済学講義(難波)
6. 因果推論の計量経済学
7. Econometrics(Bruce E. Hansen)
8. Econometric Analysis of Cross Section and Panel Data
10. Econometric Analysis(Greene)
11. 実証ビジネス・エコノミクス
12. データ駆動型回帰分析
13. 部分識別入門
14. 因果推論入門〜ミックステープ
ランキング
計量経済学上級の書籍の概要
入門レベルの計量経済学を一通り学んだら、次はもう少し本格的な教科書に進んでみるとよいでしょう。包括的に学び直したい人には、『計量経済学(New Liberal Arts Selection)』があります。確率・統計の基礎から回帰分析、操作変数法、パネルデータ分析といったミクロ計量経済学、さらに時系列分析まで幅広く扱っており、入門書の次に計量経済学全体をしっかり勉強したい人に向いた一冊です。浅野皙・中村二朗『計量経済学』も、回帰分析の基礎から最尤法、質的従属変数、パネルデータなどへ進む初級から中級レベルのスタンダードな教科書です。
一方、計量経済学全体をもう一度学ぶのではなく、興味のあるテーマを掘り下げたい場合は、それぞれの分野に特化した本を読むのもよいでしょう。『計量経済学―ミクロデータ分析へのいざない』は、操作変数法やGMM、制限従属変数、分位点回帰、ブートストラップ、ノンパラメトリック法など、ミクロデータ分析で使われる手法をもう一段深く学びたい人に向いています。『計量経済学講義』は、より進んだ計量経済学と、その理解に必要な数学・数理統計学をあわせて学べる教科書です。
数学の部分でつまずいたときには、『計量経済学のための数学』を副読本として使うのもおすすめです。線形代数、確率論、条件付き期待値、大数の法則、中心極限定理など、発展的な計量経済学を読むために必要となる数学をまとめて学ぶことができます。また、近年の実証分析で重要になっている因果推論を重点的に勉強したい場合には、『因果推論の計量経済学』があります。潜在結果モデルを軸として、無作為化実験、回帰非連続デザイン、差の差法などを理論・応用・実装までまとめて学べる本です。
このあたりの書籍は、一冊を最初から最後まで読むという使い方だけでなく、入門書を読んでいて理解が浅かったテーマや、自分の研究・実証分析で必要になった分野を補うために使うのもよいでしょう。『計量経済学(New Liberal Arts Selection)』のような体系書を軸にしながら、ミクロ計量、数学、因果推論などの専門書を組み合わせていくと、入門から中級・発展レベルへ進みやすくなります。
さらに本格的に計量経済学を学びたい場合は、英語の大学院向け教科書も選択肢になります。Bruce E. Hansenの『Econometrics』は、線形モデルから時系列、パネルデータ、ノンパラメトリック法、非線形モデル、さらに機械学習まで幅広く扱う大部の教科書です。現代的な計量経済学を広く体系的に学びたい人に適しています。
Jeffrey M. Wooldridgeの『Econometric Analysis of Cross Section and Panel Data』は、そのタイトルどおりクロスセクションデータとパネルデータを使ったミクロ計量経済学に重点を置いた大学院レベルの教科書です。操作変数法、パネルデータ、最尤法、GMM、離散選択、処置効果などを詳しく扱っているため、ミクロデータを使った実証研究を深く学びたい場合に役立ちます。
Fumio Hayashiの『Econometrics』は、大学院レベルの計量経済学をコンパクトかつ厳密にまとめた定番書です。OLSからGMM、パネルデータ、時系列、最尤法、単位根、共和分まで扱い、多くの推定方法をGMMという共通した枠組みから理解できるのが特徴です。計量経済学の理論的なつながりを整理したい場合にも適しています。
William H. Greeneの『Econometric Analysis』も、大学院レベルの代表的な教科書の一つです。線形回帰から操作変数法、パネルデータ、GMM、最尤法、離散選択、制限従属変数、時系列まで非常に広いテーマを扱っています。数値例も多く、特定の手法について詳しく確認したいときのリファレンスとして利用するのもよいでしょう。
また、計量経済学の基礎を身につけた後は、より新しいテーマや特定の分析手法に絞った本を読んでみるのもおすすめです。『実証ビジネス・エコノミクス』は、価格設定や新商品の導入、新規参入といったビジネス上の問題を題材に、需要推定や構造推定を実践的に学ぶ本です。因果推論とは少し違った、「経済理論とデータを組み合わせて反実仮想を考える」という実証分析のアプローチを知ることができます。
『データ駆動型回帰分析―計量経済学と機械学習の融合』は、従来の計量経済学と機械学習をつなぐテーマに興味がある人に向いています。変数選択、ノンパラメトリック・セミパラメトリック回帰、回帰木、正則化などを扱っており、回帰分析をデータ駆動的に行うための考え方を学ぶことができます。
『部分識別入門―計量経済学の革新的アプローチ』では、データからパラメータを一つの値として特定することが難しい場合に、どこまで範囲を絞り込めるのかを考える「部分識別」を学べます。通常の計量経済学からさらに一歩進んだテーマなので、識別の問題そのものに興味が出てきた人に適した発展書です。
因果推論をさらに広く実践的に学びたい場合には、Scott Cunningham『因果推論入門―ミックステープ:基礎から現代的アプローチまで』もあります。因果推論の基本から、DAG、差の差法、回帰不連続デザイン、操作変数法、合成コントロール法などへ進み、RやStataを使った実装も重視されています。因果推論の理論だけでなく、実際にデータを使って分析するところまで学びたい人に向いた一冊です。
入門書を読み終えた後は、すべての本を順番に読む必要はありません。まず計量経済学全体を整理したければ体系的な教科書を一冊選び、その後は「ミクロ計量」「因果推論」「数学」「機械学習との融合」「構造推定」など、自分が興味を持ったテーマの本へ進んでいくとよいでしょう。