3章 – 演習と応用8
8.
前提:1年あたり
- アメリカ労働者:シャツ100枚 または コンピュータ20台
- 中国労働者:シャツ100枚 または コンピュータ10台
(以下、労働者1人あたりのPPFとして書く。労働者数が多いなら各数量をその人数倍すればよい。)
a.各国のPPFと、貿易なしで半分ずつ生産する点
横軸をシャツ枚数 \(S\)、縦軸をコンピュータ台数 \(C\) とする。
アメリカのPPF
- 端点:\((S,C)=(100,0)\) と \((0,20)\)
- 直線:
\[
C = 20 – 0.2S
\]
半分の時間を各財に使うなら次のとおりである。
- シャツ:\(100\times 0.5 = 50\)
- コンピュータ:\(20\times 0.5 = 10\)
よって点は \((50,10)\) である。
中国のPPF
- 端点:\((100,0)\) と \((0,10)\)
- 直線:
\[
C = 10 – 0.1S
\]
半分ずつなら次のとおりである。
- シャツ:\(50\)
- コンピュータ:\(5\)
よって点は \((50,5)\) である。
b.どちらがシャツを輸出するか(数値例+グラフ上の位置)/便益を得るのはどちらか
機会費用(比較優位)を計算する。
- アメリカ:コンピュータ1台はシャツ \(\frac{100}{20}=5\) 枚の機会費用
- 中国:コンピュータ1台はシャツ \(\frac{100}{10}=10\) 枚の機会費用
コンピュータの機会費用が低いのはアメリカであるため、アメリカはコンピュータに比較優位を持つ。したがって 中国はシャツに比較優位を持つ。
よって、一般に 中国がシャツを輸出し、アメリカがコンピュータを輸出する形になりやすい。
具体例(両国がともに得する例)
各国が完全特化するとする。
- アメリカ:コンピュータ20台生産(\((0,20)\))
- 中国:シャツ100枚生産(\((100,0)\))
取引条件(価格)を「コンピュータ1台=シャツ6.25枚」とし、アメリカがコンピュータ8台を輸出し、シャツ50枚を輸入するとする。
すると消費は次のとおりである。
- アメリカ:シャツ50枚、コンピュータ \(20-8=12\) 台 → \((50,12)\)
- 中国:シャツ \(100-50=50\) 枚、コンピュータ8台 → \((50,8)\)
貿易なし(半分ずつ生産)の点は次のとおりである。
- アメリカ:\((50,10)\)
- 中国:\((50,5)\)
比較すると次の改善がある。
- アメリカ:シャツは同じ50、コンピュータが \(10 \to 12\) に増える
- 中国:シャツは同じ50、コンピュータが \(5 \to 8\) に増える
どちらも自国PPFの外側の点を消費できる(アメリカは \(S=50\) のときPPF上は \(C=10\) だが \(C=12\) を達成し、中国も \(S=50\) のときPPF上は \(C=5\) だが \(C=8\) を達成する)。
したがって、この例では両国とも貿易から便益を得る。
c.コンピュータの取引価格の範囲(シャツ枚数で測る)
コンピュータ1台の自国での機会費用(シャツ枚数)は次のとおりである。
- アメリカ:5枚
- 中国:10枚
両国が得するには、取引価格 \(p\)(コンピュータ1台=シャツ \(p\) 枚)が次を満たす必要がある。
\[
5
d.中国がアメリカに追いつき、中国も「シャツ100枚 or コンピュータ20台」になった場合
このとき両国の生産性が同一になり、機会費用も同一になる。
- 両国ともコンピュータ1台=シャツ5枚の機会費用になる
予測される貿易パターン
- リカード型の「比較優位」だけで決まる特化の根拠が消える
- どちらがどちらを輸出するかは、好みの違い、規模の経済、輸送費、企業の集積、製品差別化など別要因に依存しやすい
- 少なくとも「比較優位による明確な特化」は弱まる
経済厚生への影響
- 中国:生産可能性が拡大するので、単独でも消費可能集合が広がり、厚生は上がる
- アメリカ:単純な比較優位にもとづく貿易利益は縮小しやすい。さらに相対価格(交易条件)が変化する可能性があり、厚生への影響は一概に決めにくい(消費者が安く買えるならプラス、輸出産業の利潤や賃金が下がるならマイナスになりうる)
要点は「中国の生産性上昇で中国は確実に得るが、アメリカの影響は交易条件や市場構造次第でプラスにもマイナスにもなりうる」ということである。