3章 – 本章のポイント1(相互依存と交易)
われわれが日々使っているモノやサービスは、ほとんどが「自分の身の回り」だけで完結していない。国内の別の地域で作られた野菜、海外で採掘された金属、外国で設計された部品、世界各地の人が関わる物流やソフトウェア――そうした多数の工程と人手がつながって、ようやく一つの製品やサービスが成り立っている。これが「相互依存」である。
たとえばスマートフォンを考えると分かりやすい。原材料(レアメタル等)は複数の国から集まり、部品は別の国々で作られ、組み立てはさらに別の地域で行われ、設計やOS・アプリ開発は世界中の企業や技術者が担っている。仮に一国だけで同じ水準のスマートフォンを最初から最後まで作ろうとすれば、必要な資源が足りなかったり、設備投資が過大になったり、技術の蓄積が追いつかなかったりして、価格は上がり、品質や選択肢も限られやすい。
ここで重要なのが「交易(貿易)」である。交易とは、国や地域が互いにモノやサービスを売り買いし、足りないものを補い合う仕組みである。各国・各地域には、得意な生産分野や、豊富に持つ資源、培ってきた技術や人材がある。得意分野に資源や労働を集中して生産し、それを交易で交換する方が、全体として効率が高くなる。結果として同じ労力でも、より多くのモノやサービスを生み出せるようになる。
相互依存と交易が「望ましい」とされる主な理由は、皆が享受できる財・サービスの「量」と「多様性」が増えるからである。まず、効率化によって価格が下がりやすくなり、同じ所得でも買えるものが増える。次に、国内だけでは手に入りにくい商品(季節外れの果物、希少な資源を使った製品、特定の文化圏で発達したサービスなど)も利用できるようになり、生活の選択肢が広がる。さらに、企業は世界市場を相手にできるため規模の利益が働き、研究開発や設備投資が進み、新しい製品やサービスが生まれやすくなる。
要するに、相互依存とは「世界の分業で成り立つつながり」であり、交易とは「そのつながりを実際に回す交換の仕組み」である。これらが機能するほど、われわれはより安く、より多く、より多様な財・サービスを手にできるようになるため、基本的に望ましいものと考えられるのである。