2章 – 理解度確認テスト1
1.どういった点において、経済学は科学であるといえるか。
経済学が科学であると言えるのは、主として「方法」と「検証」の点においてである。すなわち、世界を観察し、説明の仮説を立て、データで反証可能な形にして検証し、知見を更新するという科学の基本手続きを体系的に用いる学問である。
1. 反証可能な仮説を立てる点で科学である
経済学は「価格が上がれば需要量は減る」「金利が上がれば投資は減る」といった形で、観察可能な含意をもつ仮説を構成するのである。仮説が経験的に否定されうる形で提示される限り、議論は信念ではなく検証へと向かうのである。
2. モデルを用いて因果構造を明確化する点で科学である
経済学は現象を言葉の印象論で語るのではなく、前提(選好・制約・情報・制度)を明示したモデルとして定式化する学問である。モデル化により「何が原因で何が結果か」「どの条件で結論が変わるか」を論理的に追跡できるのである。
3. データにもとづく実証で仮説を検証する点で科学である
統計データ、行政記録、企業データ、家計調査などを用い、推定・検定によって仮説の妥当性を評価するのである。単なる事例の寄せ集めではなく、系統的な測定と推論の枠組みによって知識を積み上げる点が科学的である。
4. 因果推論の方法論を発展させてきた点で科学である
経済現象は相関が多く紛れ込むため、「因果」を特定する工夫が要るのである。経済学は自然実験、差の差法、回帰不連続、操作変数、ランダム化比較試験(フィールド実験)などの研究デザインを用い、介入の効果を因果として識別しようとするのである。これは実験科学に近い発想であり、検証可能性を高める営みである。
5. 予測と政策評価を通じて外的妥当性を点検する点で科学である
景気、インフレ、失業、貿易、金融市場などについて、モデルや推定結果がどの程度予測に役立つか、また政策変更の効果をどの程度説明できるかを検討するのである。予測が外れるなら理論や前提を修正するという循環が働く点が科学的である。
6. 公開性・再現性・査読によって知見がふるいにかけられる点で科学である
手法、データ、推定手順を明示し、他者が追試・再分析できる形で議論するのが原則である。査読や追試、メタ分析を通じて誤りや過大解釈が是正され、より頑健な結論へと収斂していくのである。
7. ただし制約もあり、その自覚を含めて科学的である
人間社会は複雑で、自然科学のように完全に統制された実験が常に可能ではないのである。また、政策目的の選択には価値判断が入りうる。ゆえに経済学は「価値判断(何を望ましいとするか)」と「実証判断(何が起きるか・なぜ起きるか)」を分け、後者を科学的方法で扱うことを目指すのである。
以上より、経済学は対象が社会であるがゆえの限界を持ちながらも、仮説の反証可能性、モデルによる構造化、データによる検証、因果推論の研究デザイン、再現性と共同体的検証という点において、科学であると言えるのである。