2章 – 本章のポイント2(経済学はミクロ経済学とマクロ経済学の2つ)

経済学は、人々が限られた資源をどのように使い、どのように分け合い、どのような結果が生まれるのかを解明しようとする学問である。その研究対象は非常に広いため、分析の視点を整理する必要がある。そこで経済学は大きく、ミクロ経済学とマクロ経済学の二つに分けて考えられるのである。

 

ミクロ経済学とは何か

ミクロ経済学は、経済をつくる「個々の主体」と「個々の市場」に注目する分野である。ここでいう主体とは、代表的には家計(消費者)と企業(生産者)である。ミクロが扱う中心テーマは、次の二点に集約される。

 

1) 家計の意思決定を分析する

家計は、所得や時間といった制約のもとで、何をどれだけ買うか、どれだけ働くか、どれだけ貯蓄するかを決めている。ミクロ経済学は、この意思決定を「価格が変われば購買量はどう変わるか」「所得が増えれば消費はどう変わるか」といった形で分析する。
たとえば、商品の価格が上がると買う量が減りやすいのはなぜか、代替品があると反応はどう変わるのか、といった問いを扱うのである。

 

2) 企業の意思決定を分析する

企業は、利益を得るために何をどれだけ生産するか、どれだけ労働者を雇うか、どの技術を使うかを決める。ミクロ経済学は、「賃金が上がったら雇用はどう変わるか」「原材料価格が上がったら生産量はどうなるか」「競争相手が増えたら価格設定はどう変わるか」といった意思決定を分析するのである。

 

3) 市場での相互作用を研究する

家計と企業の意思決定は、互いに独立ではない。市場では、家計の需要と企業の供給がぶつかり合い、その結果として価格と取引量が決まる。ミクロ経済学はこの相互作用を重視し、市場がどのように機能するかを明らかにする。
さらに、競争市場だけでなく、独占や寡占のように企業の力が強い市場、情報の偏りがある市場、外部性(公害など)がある市場など、市場がうまく働かないケースも重要な研究対象である。ここから、税や補助金、規制といった政策の根拠も考えられるのである。

 

マクロ経済学とは何か

マクロ経済学は、個々の主体ではなく、経済全体を一つの大きなシステムとして捉える分野である。焦点は「国全体として景気がどう動くか」「物価や雇用がどう変化するか」「長期的に生活水準がどう伸びるか」といった、集計された指標や大きな流れである。

 

1) 経済全体のトレンドを扱う

マクロ経済学が典型的に扱うのは、GDP(産出・所得の規模)、物価(インフレ率)、失業率、金利、為替、貿易収支などである。
たとえば、「なぜ不況が起きるのか」「インフレはなぜ進むのか」「失業が増えるのはどんなときか」といった問いが中心になるのである。

 

 

2) 景気変動の原因と政策を分析する

景気には好況と不況の波がある。マクロ経済学は、その波が生まれるメカニズムを説明し、波を和らげる政策を考える。代表例が次の二つである。

・金融政策:中央銀行が金利やお金の供給量を調整し、物価や景気に影響を与える。

・財政政策:政府が歳出(公共事業・給付など)や税制を変え、需要や所得に影響を与える。

こうした政策が「どの程度効くのか」「副作用は何か」を分析するのがマクロの重要な役割である。

 

 

3) 長期の経済成長も扱う

マクロ経済学は、短期の景気だけでなく、長期的な経済成長も研究する。技術進歩、資本の蓄積、人口動態、教育や制度などが、国全体の生産力や生活水準にどう影響するかを考えるのである。

 

ミクロとマクロの関係

ミクロとマクロは別々の学問というより、焦点の置き方が違う二つの視点である。
ミクロは「木」を見る。家計や企業という意思決定主体と市場の仕組みを丁寧に追う。
マクロは「森」を見る。経済全体の動きや大きな指標の変化を追う。

そして実際には、森の動きは木の集合として成り立つ。つまり、マクロの結果はミクロの行動の積み重ねである一方、マクロの状況(不況、インフレ、金利上昇など)はミクロの意思決定にも強く影響する。両者は相互に結びついており、二つの視点を行き来することで経済の理解は深まるのである。