東京大学で行われるミクロ経済学の授業,教科書(駒場:入門,本郷:経済学部,研究科)

 

 

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東京大学でのミクロ経済学の授業、教科書等

東大のミクロ経済学は「入門 → 中級(学部) → 上級/大学院コア → 大学院の発展・研究実践」という流れで積み上がる設計になっています。最初は教養学部、その後経済学部、経済学研究科での主要な授業を確認します。

もちろん他学部等でも行われていますが、経済学部・経済学研究科を中心に説明します。

 

1. 大枠の流れ(学年が進むにつれて)—ミクロ経済学

入門(教養・前期課程)

経済Ⅰ(Introduction to Economics)
ミクロ側では「消費者の最適化・企業の利潤最大化・競争均衡・不完全競争」といった“経済学の言語”を体験。評価は期末試験で行われるため、まずは用語と基本図式に慣れるのが狙いです(この科目はマクロの基礎とセット設計)。

中級(学部専門:2〜3年目想定)

ミクロ経済学Ⅰ(学部)
微積分を用いる標準的な中級ミクロ。消費者行動・企業行動から、部分均衡→一般均衡までの“核”を固めます。テキストは神取『ミクロ経済学の力』、参考書に神取『ミクロ経済学の技』八田『ミクロ経済学I・II/Expressway』。評価は宿題30%+期末70%。

ミクロ経済学Ⅱ(学部)
Ⅰの続編(A2ターム)。ⅠとⅡは同時履修・同日期末・同一成績付与の一体設計で、宿題の解説や質疑のためのTAセッションも用意されます。

上級(学部上級)/大学院コア(修士1年想定)

(上級/院)ミクロ経済学Ⅰ
選好・消費者・生産者・一般均衡を大学院レベルで体系化。授業言語は英語、筆記試験で評価、テキストはMas-Colell, Whinston & Green (MWG)。学部上級〜院1年の“コア”として位置づけられます。

(上級/院)ミクロ経済学Ⅱ
大学院レベルのゲーム理論を集中的に扱い、宿題・期末試験・週次TAセッションで運用。主要テキストはMWG、参考書にGame Theory(Fudenberg–Tirole)A Course in Microeconomic Theory(Kreps)Game Theory: Analysis of Conflict(Myerson)・Game Theory for Applied Economists(Gibbons)

「名称が違うが実質同じ」対応(学部上級 ↔ 大学院)

  • 上級ミクロ経済学Ⅰ(学部) ↔ ミクロ経済学Ⅰ(大学院):内容・運営(英語/筆記/テキストMWG)が同系で、学部上級と院コアが合同で学ぶ設計。
  • 上級ミクロ経済学Ⅱ(学部) ↔ ミクロ経済学Ⅱ(大学院)院レベルのゲーム理論を核とし、宿題+期末+TAセッション、かつ学部上級と院の合同で実施。

 

 

 

 

2. 大枠の流れ(学年が進むにつれて)—ミクロ経済学

大学院の発展・研究実践(修士〜博士段階)

Mechanism Design(メカニズムデザイン)
循環型経済(サーキュラーエコノミー)への制度設計を題材に、講義+討論+宿題で進行。評価は宿題・出席・試験など。参考には松島『サステナビリティの経済哲学』、宇沢『社会的共通資本。理論を現代の制度設計課題に接続する実践志向の科目です。

寡占理論(Oligopoly Theory)
産業組織のコアである寡占を、ゲーム理論の枠組みで多面的に学ぶ上級講義。履修上の注意として、ミクロ理論・ゲーム理論の基礎が前提。

Advances in Economic Theory
最新のミクロ理論・ゲーム理論の論文を輪読するリーディンググループ形式。評価は授業内プレゼン+タームペーパー。院コア修了相当の前提を明記。前線の研究手法に触れる橋渡し科目です。

Topics in Game Theory
オークション理論とメカニズムデザインを軸に、収入同値原理、相互依存価値、Linkage Principle、高次の不確実性、情報のランク付けなどを横断。講義+学生プレゼン、評価はレポートとプレゼン。英語。

Recent Advances in Game Theory
ミススペシファイド学習繰り返しゲーム(自己生成・PPE・民間監視・フォーク定理)など、トップジャーナルを読める基礎体力を養成。終盤は学生プレゼンが評価の要。英語。

ミクロ理論ワークショップ I / II
内外の研究者・院生による最先端研究のセミナー。評価は参加度。。英語。

ミクロ実証ワークショップ I / II
CIRJEで公開されるスケジュールに沿って出席し、1ページ程度のレポートを所定の締切。出席レポートの本数で成績基準。英語。

 

念の為ですが、下記はミクロとはつくものの計量の枠組みになります。

Empirical Microeconomics(実証ミクロ)
観察データで因果推論を行うための計量ツールを総覧:回帰・実験・IVDIDRD・離散選択・動学離散選択・機械学習・“理論からの予測”型実証…と手法×代表論文で往復。評価は宿題・参加・期末試験または学生プレゼン。A1A2の月曜5限・英語。

 

学びの段階感—ミクロ経済学

  • 基礎を固める(入門):最適化・均衡・市場構造の語彙と直観を身につけ、UTOL中心×期末評価の枠で学ぶ。
  • 道具を増やす(中級):神取テキストで部分均衡→一般均衡の回し方を獲得。宿題30%+期末70%、Ⅰ・Ⅱは一体運営
  • 数理に踏み込む(上級/院コア):MWGで一般均衡を厳密化し、ゲーム理論を大学院水準で運用(宿題+試験+週次TA)。学部上級と院が合同で実施。
  • 最前線に接続(院発展)メカニズムデザイン/寡占理論/ゲーム理論トピックス/実証ミクロで専門を深掘りし、輪読・プレゼンワークショップ参加+レポートで研究の“目と手”を磨く。

 

 

 

 

 

 

東大の授業で使われるミクロ経済学の教科書、参考書

段階 教科書・参考書・主要論文 科目(学部/院)
入門 教科書:指定なし(この時点ではミクロ入門のものを) 経済Ⅰ(教養)
中級 神取道宏『ミクロ経済学の力』 ミクロ経済学Ⅰ(学部)
中級 神取道宏『ミクロ経済学の技』 ミクロ経済学Ⅰ(学部)
中級 八田達夫『ミクロ経済学I・II』 ミクロ経済学Ⅰ(学部)
中級 八田達夫『ミクロ経済学Expressway』 ミクロ経済学Ⅰ(学部)
中級 未定(中級、上級のミクロ) ミクロ経済学Ⅱ(学部)
中級 未定(中級、上級のミクロ) ミクロ経済学Ⅱ(学部)
上級/院コア Mas-Colell, Whinston, Green Microeconomic Theory 上級ミクロ経済学Ⅰ(学部)/ミクロ経済学Ⅰ(大学院)
上級/院コア Kreps A Course in Microeconomic Theory 上級ミクロ経済学Ⅰ(学部)/ミクロ経済学Ⅰ(大学院)
上級/院コア Mas-Colell, Whinston, Green Microeconomic Theory 上級ミクロ経済学Ⅱ(学部)/ミクロ経済学Ⅱ(大学院)
上級/院コア Fudenberg & Tirole Game Theory 上級ミクロ経済学Ⅱ(学部)/ミクロ経済学Ⅱ(大学院)
上級/院コア Kreps A Course in Microeconomic Theory 上級ミクロ経済学Ⅱ(学部)/ミクロ経済学Ⅱ(大学院)
上級/院コア Myerson Game Theory: Analysis of Conflict 上級ミクロ経済学Ⅱ(学部)/ミクロ経済学Ⅱ(大学院)
上級/院コア Gibbons Game Theory for Applied Economists 上級ミクロ経済学Ⅱ(学部)/ミクロ経済学Ⅱ(大学院)

 

 

 

 

 

東大ではまずは同大学ではやはりミクロ経済学の力などがよく使われています。

 

神取道宏『ミクロ経済学の力』(日本評論社)

市場メカニズムの働きと、その限界・政策含意までを、数理と実例を行き来しながら腰を据えて学ぶ“本体テキスト”。「価格理論(消費者・企業・市場均衡・市場の失敗・独占)」に続けて、「ゲーム理論と情報の経済学(静学・動学ゲーム、保険とモラルハザード、逆淘汰とシグナリング)」まで一気通貫で扱い、巻末には数学の最小限の補論も付いています。実世界の事例を豊富に用いるのが大きな特徴で、抽象モデルと政策・現象の対応関係を具体的に掴ませる設計です。

 

神取道宏『ミクロ経済学の技』(日本評論社)

『力』に完全対応した演習書。各章で「本章で学ぶこと」「キーワード」を明示し、復習問題→発展問題→現実への応用の順に解いていくドリル構成。巻末には「経済学ビフォーアフター」という短いケース集(音楽の無料ダウンロード、外食価格、高速道路料金、重要産業の保護、輸入自由化の是非…)があり、理論を現実に当てる筋力を鍛えます。