1.1.1 無差別曲線と効用関数 – 問題3(解答・解説)
問題3の解説
与えられている効用関数は
$$
u(x,y)=xy
$$
と
$$
v(x,y)=\ln x+\ln y
$$
です。
ただし、$x>0,\ y>0$ です。
まず大事なのは、
$$
\ln x+\ln y=\ln(xy)
$$
ということです。
つまり $v(x,y)$ は、$u(x,y)=xy$ に対して
$$
v(x,y)=\ln(u(x,y))
$$
となっています。
ここで $\ln$ は、正の範囲では単調増加関数です。
だから、$u$ が大きい点ほど $v$ も大きくなります。
このため、$u$ と $v$ は同じ選好を表します。
各選択肢の確認
(1) $u$ と $v$ は同じ選好を表している
これは正しいです。
なぜか
さきほど見たように、
$$
v(x,y)=\ln(xy)=\ln(u(x,y))
$$
です。
$\ln$ は、値の大小関係を変えない関数です。
たとえば、
- $u(A)>u(B)$ なら $\ln(u(A))>\ln(u(B))$
- $u(A)=u(B)$ なら $\ln(u(A))=\ln(u(B))$
です。
だから、どの点をどの点より好むか、という順位は変わりません。
やさしく言うと
$u$ と $v$ は、満足度の点数の付け方が違うだけで、
「どちらがより好ましいか」という順番は同じです。
だから (1) は正しいです。
(2) $u$ と $v$ は同じ選好を表していても、各点での限界効用の値は一般に一致しない
これは正しいです。
計算してみる
まず $u(x,y)=xy$ の限界効用は
$$
MU_x^u=\frac{\partial u}{\partial x}=y,\qquad
MU_y^u=\frac{\partial u}{\partial y}=x
$$
です。
次に $v(x,y)=\ln x+\ln y$ の限界効用は
$$
MU_x^v=\frac{\partial v}{\partial x}=\frac{1}{x},\qquad
MU_y^v=\frac{\partial v}{\partial y}=\frac{1}{y}
$$
です。
比べると、たとえば $(x,y)=(2,3)$ なら
$$
MU_x^u=3,\qquad MU_x^v=\frac{1}{2}
$$
で、まったく同じではありません。
やさしく言うと
同じ選好を表していても、効用関数の数字の付け方が違えば、
限界効用の値そのものは変わります。
だから (2) は正しいです。
(3) 任意の消費点において、$u$ から計算した限界代替率と $v$ から計算した限界代替率は一致する
これも正しいです。
$u$ から計算する
$$
u(x,y)=xy
$$
なので、
$$
MU_x^u=y,\qquad MU_y^u=x
$$
したがって限界代替率は
$$
MRS_{xy}^u=\frac{MU_x^u}{MU_y^u}=\frac{y}{x}
$$
です。
$v$ から計算する
$$
v(x,y)=\ln x+\ln y
$$
なので、
$$
MU_x^v=\frac{1}{x},\qquad MU_y^v=\frac{1}{y}
$$
したがって限界代替率は
$$
MRS_{xy}^v=\frac{MU_x^v}{MU_y^v}
=\frac{1/x}{1/y}
=\frac{y}{x}
$$
です。
結論
$$
MRS_{xy}^u=\frac{y}{x},\qquad MRS_{xy}^v=\frac{y}{x}
$$
なので、両者は一致します。
やさしく言うと
効用の数値の付け方は違っても、
「$x$ と $y$ をどんな割合で交換しても同じ満足か」という関係は同じです。
だから (3) は正しいです。
(4) $u$ と $v$ は数値の大きさが異なるので、たとえば「効用が10から20へ上がること」と「効用が1から2へ上がること」の差を、行動的に直接比較することができる
これは誤りです。
したがって、これが答えです。
なぜ (4) が誤りなのか
この問題の大事なテーマは、順序的効用です。
順序的効用では、意味があるのは
- どちらが大きいか
- どちらが好ましいか
- 同じか違うか
という順位だけです。
一方で、
- 10 から 20 への上昇
- 1 から 2 への上昇
のような数字の差や倍率そのものには意味がありません。
なぜ数字の差に意味がないのか
同じ選好を表す効用関数は、単調増加変換でいくらでも作れます。
たとえばこの問題では
$$
u(x,y)=xy
$$
と
$$
v(x,y)=\ln(xy)
$$
は同じ選好を表しています。
でも、たとえば
- $u=1$ の点では $v=\ln 1=0$
- $u=2$ の点では $v=\ln 2$
- $u=10$ の点では $v=\ln 10$
- $u=20$ の点では $v=\ln 20$
です。
すると、
- $u$ で見た「10→20」と「1→2」は、見た目の差の扱いが違うように見えても、
- $v$ で見ると変化量は
$$
\ln 20-\ln 10=\ln 2
$$
と
$$
\ln 2-\ln 1=\ln 2
$$
になったりして、見え方が変わります。
つまり、効用の数字そのものは付け方しだいなので、
「どちらの増え方が大きいか」を行動的に直接比較することはできません。
やさしく言うと
効用は、テストの点数みたいに
「20点アップのほうが10点アップより2倍うれしい」
とは言えません。
効用はあくまで
順位を表すための番号
です。
だから、
- 効用が10から20になった
- 効用が1から2になった
という数字をそのまま比べて、
「前者のほうが満足の増え方が大きい」とは言えません。
これが (4) が誤りである理由です。
ポイント
- (1) 正しい
→ $v=\ln(u)$ なので、同じ選好を表す - (2) 正しい
→ 同じ選好でも限界効用の値は一致しない
$$
MU_x^u=y,\quad MU_x^v=\frac{1}{x}
$$
- (3) 正しい
→ 限界代替率はどちらも
$$
\frac{y}{x}
$$
- (4) 誤り
→ 順序的効用では、効用の数字の差そのものは比較できない
誤っているものは (4) です。