1.1.1 無差別曲線と効用関数 – 問題1(解答・解説)

問題1の解説

まず、式の表記を整理すると、この問題の効用関数は

$$
u(x,y)=2\sqrt{x}+y \qquad (x>0,\ y\ge 0)
$$

です。
この問題は、この効用関数について
「どの文が誤っているか」
を選ぶ問題です。

答え

(4) が誤りです。

まず、この効用関数が表していること

$$
u(x,y)=2\sqrt{x}+y
$$

という式は、

  • $x$ 財が増えるとうれしい
  • $y$ 財が増えてもうれしい
  • ただし、$x$ 財はたくさん持つほど、さらに1単位増えたときのうれしさが小さくなる

という選好を表しています。
特に、$\sqrt{x}$ が入っているので、$x$ については
「増えるほど追加のうれしさが小さくなる」
という性質があります。

各選択肢の確認

(1) $X$ 財の限界効用は $\dfrac{1}{\sqrt{x}}$ である
これは正しいです。

計算で確認
$X$ 財の限界効用は、効用関数を $x$ で偏微分して求めます。

$$
MU_x=\frac{\partial u}{\partial x}
=\frac{\partial}{\partial x}(2\sqrt{x}+y)
=2\cdot \frac{1}{2\sqrt{x}}
=\frac{1}{\sqrt{x}}
$$

したがって、

$$
MU_x=\frac{1}{\sqrt{x}}
$$

なので、(1) は正しいです。

やさしく言うと
これは、$x$ を少し増やしたときに効用がどれだけ増えるか、という意味です。
$\dfrac{1}{\sqrt{x}}$ なので、

  • $x$ が小さいときは増やすとうれしさが大きい
  • $x$ が大きいときは増やしてもうれしさが小さい

ということを表しています。

(2) $Y$ 財で表した $X$ 財の限界代替率は $\dfrac{1}{\sqrt{x}}$ である
これも正しいです。

計算で確認
まず、$Y$ 財の限界効用は

$$
MU_y=\frac{\partial u}{\partial y}=1
$$

です。
したがって、$Y$ 財で表した $X$ 財の限界代替率は

$$
MRS_{xy}=\frac{MU_x}{MU_y}
=\frac{1/\sqrt{x}}{1}
=\frac{1}{\sqrt{x}}
$$

となります。
よって、(2) も正しいです。

やさしく言うと
限界代替率とは、簡単に言えば
「$x$ を少し増やす代わりに、$y$ をどれだけ減らしても満足度が変わらないか」
を表しています。
この問題では、

  • $x$ のうれしさは $\dfrac{1}{\sqrt{x}}$
  • $y$ のうれしさは $1$

なので、その比として

$$
\frac{1}{\sqrt{x}}
$$

になります。

(3) この効用関数の無差別曲線は、効用水準が高くなると上方へ平行移動した形になる
これも正しいです。

計算で確認
効用水準を $\bar{u}$ とすると、無差別曲線は

$$
2\sqrt{x}+y=\bar{u}
$$

です。
これを $y$ について解くと、

$$
y=\bar{u}-2\sqrt{x}
$$

となります。
ここで $\bar{u}$ が変わると、変わるのは $\bar{u}$ の部分だけです。
$-2\sqrt{x}$ の形は変わりません。
つまり、曲線の形は同じままで、上下にずれることになります。
したがって、(3) は正しいです。

やさしく言うと
無差別曲線は「同じ満足度になる点の集まり」です。
この問題では、満足度が高くなるほど、同じ形の曲線が上にずれるだけです。

(4) この効用関数が表す選好は同質的(homothetic)であるため、原点から伸びる同一の射線上では限界代替率は一定である
これが誤りです。

なぜ (4) が誤りなのか

1. この効用関数は homothetic ではない
この効用関数

$$
u(x,y)=2\sqrt{x}+y
$$

は、準線形効用関数です。
一般には、homothetic(同質的)な選好ではありません。
つまり、「同じ比率で財を増やしたときに、無差別曲線の形がきれいに保たれるタイプの選好」ではない、ということです。

2. 限界代替率は一定ではない
この問題の限界代替率は

$$
MRS_{xy}=\frac{1}{\sqrt{x}}
$$

でした。
ここで大事なのは、これは $x$ の値によって変わる ということです。
たとえば、

$$
x=1 \quad のとき \quad MRS_{xy}=\frac{1}{\sqrt{1}}=1
$$

$$
x=4 \quad のとき \quad MRS_{xy}=\frac{1}{\sqrt{4}}=\frac{1}{2}
$$

になります。
つまり、$x$ が変わると MRS も変わります。

3. 同じ射線上でも MRS は変わる
(4) では
「原点から伸びる同一の射線上では限界代替率は一定」
と言っています。
でも、たとえば同じ射線上として

$$
y=ax
$$

のような直線上を動くとします。
この射線上でも、点が変われば $x$ の値が変わります。
すると

$$
MRS_{xy}=\frac{1}{\sqrt{x}}
$$

の値も変わってしまいます。
だから、同じ射線上にあるからといって MRS が一定になるわけではありません。

直感的に言うと

(4) の文は、
「この効用関数は特別なきれいな性質を持っていて、原点から同じ方向に伸びる線の上では、財の交換比率がずっと同じになる」
と言っているのですが、この問題の効用関数はそうではありません。
実際には、

  • $x$ が少ないときは $x$ を増やす価値が大きい
  • $x$ が多くなると $x$ を増やす価値が小さくなる

ので、交換比率は変わります。
つまり、限界代替率は一定ではないのです。

ポイント

各選択肢を整理すると、

(1) 正しい

$$
MU_x=\frac{1}{\sqrt{x}}
$$

(2) 正しい

$$
MRS_{xy}=\frac{MU_x}{MU_y}=\frac{1}{\sqrt{x}}
$$

(3) 正しい
無差別曲線は

$$
y=\bar{u}-2\sqrt{x}
$$

なので、同じ形で上にずれる

(4) 誤り

$$
MRS_{xy}=\frac{1}{\sqrt{x}}
$$

は $x$ によって変わるので、同じ射線上でも一定ではない

誤っているものは (4) です。