マンキュー経済学Ⅰ(ミクロ編) – 5章 – 演習と応用8

8.地下鉄運賃値上げと需要の価格弾力性(NYタイムズの記事データ)

与えられた情報

  • 運賃(トークン価格):1.25ドル → 1.50ドル
  • 値上げ幅:0.25ドル
  • 乗客数:前年同月比で 約400万人減(4.3%減)

a.地下鉄利用における需要の価格弾力性の推定

需要の価格弾力性の基本式は

$$
\text{需要の価格弾力性}=\frac{\text{需要量の変化率}}{\text{価格の変化率}}
$$

です。

価格の変化率

$$
\frac{1.50-1.25}{1.25}=\frac{0.25}{1.25}=0.20=20\%
$$

需要量(乗客数)の変化率

$$
-4.3\%
$$

弾力性(近似)

$$
E_d=\frac{-4.3\%}{20\%}=-0.215
$$

したがって、推定される需要の価格弾力性は

$$
E_d \approx -0.22
$$

(絶対値で表すと約 0.22)

これは 1より小さいので、地下鉄需要は 非弾力的 と推定されます。

b.運賃が上昇したとき、地下鉄運営当局の収入はどうなるか

総収入(運賃収入)は

$$
TR=P\times Q
$$

で表されます。

  • 価格は 20%上昇
  • 利用者数は 4.3%減少

需要が非弾力的(弾力性の絶対値が1未満)なので、価格上昇によるプラス効果のほうが大きく、収入は増加します。

実際に比率で見ると(概算):

$$
\frac{TR_2}{TR_1}=1.20 \times (1-0.043)=1.20 \times 0.957=1.1484
$$

つまり、約 14.8%増加(概算)です。

c.この弾力性の推定が必ずしも信頼できない理由

この推定はあくまで「記事データからの概算」であり、必ずしも厳密ではありません。理由は次の通りです。

  1. 他の要因の影響を除けていない
    乗客数の変化は、運賃以外にも影響されます。たとえば:
    • 景気・雇用状況
    • 天候
    • 地下鉄サービスの質(遅延・本数・安全性)
    • 他の交通手段の価格変化(バス、タクシー、車)
    • 工事・路線変更

    つまり、「乗客減少のすべてが値上げのせい」とは限りません。

  2. 1か月分のデータしか見ていない
    値上げ直後の1か月は、短期的な反応しか反映していない可能性があります。
    長期では人々が通勤手段や居住地を調整し、弾力性が変わることがあります。
  3. 前年同月比の比較にはノイズがある
    前年同月と比べる方法では、
    • 曜日の並び(平日の数)
    • 祝日・イベント
    • 季節要因

    などが混ざることがあります。

  4. 「トークン価格」だけでは実際の平均運賃を表しきれない可能性
    定期券や他の支払い方法がある場合、実際の平均支払運賃の変化率は異なるかもしれません。