公正取引委員会に経済学を活かした新卒で入る方法(学部卒,修士卒)

 

 

学部新卒の場合

総合職試験(大卒程度)を受験 → 合格 → 公正取引委員会の官庁訪問、が基本ルートです。

大卒程度の受験資格は「年齢」または「大学卒業(見込み)」などで定義されています。

 

修士新卒の場合

典型は 総合職試験(院卒者)を受験 → 合格 → 官庁訪問です。

院卒者は「修士課程(または専門職大学院)の修了(見込み)」が受験資格に入っています。

 

というようにともに学部、修士卒で公正取引委員会に入ることができます。

ここではより経済学、それに近いことがどのようなところでできるか見ていきましょう。

 

公正取引委員会の組織

1) 公正取引委員会はどんな機関?

いわゆる「○○省」型ではなく、**合議制の「行政委員会」**にあたり、委員長+委員4名で構成されます。

ほかから指揮監督を受けずに独立して職務を行うのが特徴です。

行政組織上は 内閣府 の外局として位置づけられています。

委員会の事務を処理するために事務総局が置かれ、(資料上)令和7年度末の定員は957人とされています。

2) 組織の大きな区分(ざっくり)

上から見ると、概ねこういう階層です。

  • 委員会本体(委員長+委員4名)
  • 事務総局(トップは「事務総長」)
  • 官房
  • 経済取引局
  • 取引部
  • 審査局
  • 犯則審査部
  • (※審判官/地方事務所等 など)

3) 主要部署(本部・事務総局)の役割

 

官房

事務総局全体の“管理部門”に近い役割です。

  • 事務の総合調整、法令の制定・改廃手続、情報公開、政策評価、情報システム、予算・会計・調達など
  • 広報(パンフ作成、独禁法教室など)や、処分前手続(意見聴取手続)関係の事務
  • 人事(採用・給与・研修・福利厚生など)
  • 国際連携(各国競争当局との協力、国際機関での議論参加、技術協力など)

 

経済取引局

“競争政策の企画・制度面”や“企業結合(M&A)審査”の色が濃い部署です。

  • 他省庁の法律案・施策が競争を阻害しないよう調整、入札談合の未然防止(研修、入札制度調査など)
  • 中長期の観点から競争政策を企画立案(独禁法の見直し等)
  • デジタル市場の実態把握・分析、ガイドライン等の検討、スマホソフトウェア競争促進法の施行事務
  • 企業結合(合併・株式取得など)の届出受付と審査(競争制限の恐れがある場合は変更措置を求める等)

 

取引部

“取引慣行・下請・優越的地位の濫用”や“相談・ガイドライン”が中心です。

  • 不公正な取引方法などのガイドライン策定・公表(未然防止)
  • 流通実態・価格形成・取引慣行などを調査し、問題点の指摘や指導
  • 企業・業界団体からの独禁法相談に対応
  • フリーランス・事業者間取引適正化等法:普及啓発、相談、違反疑いの調査・措置
  • 下請法の普及啓発(講習会等)や、取適法(中小受託取引適正化法)違反の調査・勧告等

 

 

審査局

“事件審査(調査・立入検査・命令)”の中核です。

  • 申告(情報提供)受付、予備的調査、特定分野(不当廉売・差別対価など)の監視・調査
  • 課徴金減免(リニエンシー)制度の運用(報告・資料の受領等)
  • 立入検査や供述聴取などで証拠収集し、立証できれば排除措置命令や課徴金納付命令へ

 

 

犯則審査部

悪質事案を刑事事件として扱うための調査部門です。

  • 許可状に基づく臨検・捜索・差押え等を行い、必要に応じて検事総長へ告発

 

審判官(※補足)

現在の“審判制度”は廃止されていますが、経過措置で対象になる事件があり、その審判を主宰するのが審判官(3名任命)と説明されています。

4) 地方組織(地方事務所・支所など)

 

全国に地方拠点があり、資料では

北海道、東北、中部、近畿中国四国(+中国支所・四国支所)、九州、そして沖縄は「沖縄総合事務局総務部公正取引課」で事務を処理、という形が示されています。

(現場では、相談受付・調査・普及啓発などを地域で担うイメージです。)

 

 

5) 「その他の組織的なところ」

CPRC 競争政策研究センター(研究拠点)

競争政策・独禁法運用の理論的基礎を強化するために、外部研究者・実務家とJFTC職員の協働プラットフォームを整備する目的、とされています。

 

経済学関連にありそうな部署等

配属「部署」単位でいうと、公取委の中で経済学っぽさ(市場構造・データ・因果や効果の推定)が強く出やすいのは、だいたい次のあたりです。

経済学要素が特に強め

・経済取引局

競争政策の企画、経済実態の調査、企業結合(M&A)審査、(近年は)デジタル分野の制度運用などが所掌として整理されています。=「市場を見る」仕事が中心になりやすい部署です。

 

・経済分析室(官房総務課)

名前の通り、経済分析を横断的に支える位置づけで、官房総務課に置かれています。定例会見でも、企業結合課での経済分析班→官房への配置→経済分析室設置、という流れが説明されています。

 

・競争政策研究センター(CPRC)

競争政策に関する研究・有識者との議論の場で、経済学者・実務家・法学者との交流や研究活動が中心。学術寄りの色が強いです。

 

経済学要素は「中くらい〜案件次第」

・審査局

基本は独禁法違反事件の審査(証拠収集・立証)ですが、事件の類型によっては価格・数量・市場シェアなどのデータを見て「競争への影響」を考える場面もあります。

 

経済学より「制度運用・取引適正化」色が強め

・取引部

下請法や取引適正化など、ルール運用・相談対応寄りの比重が相対的に高い(ただし業界実態を踏まえた検討はあります)。

 

・犯則審査部

事件の中でも刑事的な手続に関わる色が強く、経済分析より捜査・立証寄りになりやすいです(もちろん事案理解に市場の知識が役立つことはあります)。

 

 

新卒でのケース

学部卒想定

総合職の新卒でも、経済学の素養が活きる部署(例:企業結合審査や市場調査に近いところ)に配属される可能性はあります。実際、公取委は独禁法の執行や政策立案の中で、データや理論に基づく分析を重視しており、2022年4月には、企業結合審査・事件審査・実態調査などにおける経済分析業務を専門に担う「経済分析室」を設置しています。

一方で、配属の現実としては、いきなり経済分析室や研究センターに直行するのは一般に狭き門になりやすく、まずは本局の各部局で案件を経験しつつ、ローテーションの中で「分析ができる人」として実績を積み、近づいていくイメージが近いです。公取委の採用パンフでも、総合職は概ね1〜3年ごとに部局を異動し、特に採用直後は1年ごとの異動が多い傾向があるとされています。

そのため、官庁訪問や面談では部署名だけでなく、「企業結合(M&A)の競争影響評価」「市場調査(マーケット・スタディ)」「デジタル市場の競争政策」のように、“分析が必要な業務単位”でやりたいことを言語化し、学部で学んだミクロ・産業組織・統計のどれを使って貢献したいかまで落とし込むと通りやすくなります。

 

修士卒想定

総合職の新卒でも、経済学寄りの部署に配属される可能性は十分あります。とくに修士で産業組織論や計量経済学、データ分析をしっかりやっている場合、企業結合審査や市場調査など、「理論とデータで競争への影響を見立てる」領域と相性が良いです。公取委は、企業結合審査・事件審査・実態調査などにおける経済分析を専門に扱う体制として、2022年4月に**「経済分析室」**を設置し、法執行・政策立案で経済分析の活用を進める方針を明確にしています。

ただ、ここもやはり人数が限られやすいので、キャリアの現実としては

(例)企業結合/審査/調査系で案件経験 →(分析実績を積む)→ 経済分析室

というルートが「狙いやすい型」になりがちです。ローテーションは総合職だと採用後しばらくは1年ごとの異動が多いとされているため、早い段階で“分析力が使えるポジション”に当たる可能性もあります。

また、研究寄りの仕事としては、競争政策研究センター(CPRC)が「理論的・実証的基礎を強化する」目的で活動しており、外部有識者(所長・主任研究官等)に加えて、事務総局職員が研究員として研究に従事する体制が説明されています。つまり、修士での研究経験が、ローテの中でCPRCに関与する際の強みにもなります 。

 

 

エコノミスト職もある(院卒)

公取委の「任期付職員(エコノミスト)」は、院卒であります。ただし、募集要項上は 博士号の有無で区分(処遇)が分かれる形になっています。

 

学位は何が必要か

・博士号(PhD)

ある場合は「博士号を有し、高度の専門的知識経験等を有すると認められる者」という区分で採用・処遇が定義されています。

 

・博士号がない場合

修士号(Master)を有し、かつ実務経験などを通じて専門的知識経験があると認められる者という区分が明記されています。つまり **修士+(研究実績または実務実績)**で応募レンジに入ります。

 

ちなみに「応募資格」で見られている中身(学位より実績寄り)

募集の「応募資格」は、学位名そのものよりも、

・大学・研究機関での経済学(理論/実証)の調査研究の経験

・実績または民間(シンクタンク/コンサル等含む)でのミクロ経済・産業実態の調査研究・データ分析実務の実績

といった 研究・分析の実績が柱になっています 。